花楝

ひろがりて雲もむらさき

ひろがりて雲もむらさき花樗
- 古賀まり子

初夏を迎えるやんばるでは、センダンの花吹雪が見られます。 センダンは、古い言葉で「あふち」と呼ばれ、日本に現存する最古の和歌集「万葉集」にも詠まれています。

遠目には華やかさを感じませんが、爽やかな風にのって、ちらちらと舞う花の様は美しいものです。私の庭にも大きなセンダンがあり、遠くからは薄紫色の雲のよう。近くに寄って見上げると、たくさんの小さなちいさな花々が集まって咲き乱れていることに気づきます。静かな夜には、ほのかな奥ゆかしい香りが漂い、神秘的な佇まいを感じさせてくれます。


センダンの花言葉は、「意見の相違」。

互いを知ること自体がコミュニケーションであると言いますが、思いがけず見解がすれ違ってしまい、時には衝突してしまうことも。そんなときには、意見を傾聴し、意見を伝え、さらに発展させる。お互いの意見を理解し、より質の高い結論へと統合させていく。

面白いもので、「思いがけず出会う場所」を逢地(おうち)と呼びます。ことなる場所から歩き出した二人が、峠の頂点で出会う。その様子を象った言葉です。九州の佐賀県にも相知(おうち)という町があり、これは「川が逢う地」に由来するそうです。川もあわされば、勢いが増すでしょう。下流の松浦川は、唐津市の文化を豊かに育んで来ました。思いがけない意見の相違も相知れば花樗。

ひろがりて雲もむらさき…